人類最古の哲学

人類最古の哲学 カイエ・ソバージュ(1) (講談社選書メチエ)

読了。

まぁ、概要ははてなの説明文を読んでもらうとして。

神話学の本ってかかれてるけど、手法として構造人類学的なアプローチがかなり入ってて、シンデレラの分析がはじまってからはかなりレヴィ・ストロースさん的な筋立てになってます。

正直、この本だけで構造とか神話学とかを理解するのは厳しいと思うし、前半部分は冗長なかんじがあるのでやや退屈だったりしますが、後半でシンデレラの分析がはじまって以降は、シンデレラ物語に出てくる物品による異界との交流のお話とか、中国でのシンデレラ物語とかが紹介されて、たいへん読ませるものになってます。

特に、カナダ地域で白人と交流を持ち、シンデレラ物語をパロディ化して自分たち自身のシンデレラ物語*1を構築してしまったミクマク・インディアンのお話は一読の価値ありかと思います。
でてくる物品の価値と意味合いを正逆にしつつ、もともとの物語の筋道は同じくする、とか、レヴィ・ストロースさんが見たら泣いて喜ぶような好例です(笑)。

あと、「謎々」を、「言語的な近親相姦」として位置付けてるのも非常におもしろいです。

ほら、謎々って、「いっけん何の関連性も無く、近づいてはならないものを、一点の共通性によって急激に近づける」じゃないですか。

これを、オイディプス神話の近親相姦(=近づいてはならない親子が近づく状態)と関連付けたうえ、スフィンクスのかけた謎々を簡単に解いてしまうオイディプスはつまり。。。ってかんじで進めるの。

ひとによっては「飛躍しすぎではないか」って眉をひそめる向きもあるのでしょうけれど(苦笑)。

あと、謎々を、近づいてはならない二者が近づく状態って考えて、「この世とあの世」とか「生者と死者」とかと結びつけるっていう作用にも触れてたりします。

神話とか好きな人であれば構造の知識は避けられない道であると思うし、オススメです。

*1:「見えない人」の物語